○月に囚われた男
映像 |
7点
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ストーリー |
9点 |
キャラクター
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8点 |
音楽 |
8点 |
魅力 |
9点 |
総合得点 |
40点 |
感想
<あらすじ>
近未来、人類は新たなクリーンエネルギーとして、月の資源「ヘリウム3」の恩恵を受けることになった。
その事業に真っ先に取り組み、今や地球の電力の7割近くを賄う巨大な電力配給会社。サムは、そこの社員だった。
サムの仕事は、月でのヘリウム3の採掘と地球への輸送。
3台の採掘機を管理し、タンクが満タンになれば回収、地球へと射出する。
そんな仕事を行う基地には、彼しか人間はいなかった。
仕事の契約期間は3年間。
それが終われば、地球に帰れる。
3年の契約も残り2週間になっていた。
地球に残してきた妻、まだ幼い娘。
しかし、妻との関係は決して良好とは言えなかった。
通信衛星が故障して、リアルタイム通信が出来ないことも、その要因であった。
契約終了が近づいていたが、3年という間、人間と触れ合わず
愛する家族とも会えないストレスで、サムは限界だった。
幻覚さえ見るようになったのである。
そんな中で、採掘機のタンクが満タンになり、彼は回収に出かけるが
そこで、事故を起こしてしまう・・・
とても良質なSF作品です。
宇宙戦争が起きるわけでもなく、隕石が落ちてくるわけでもなく
淡々と、近未来の技術発展による人間性の欠如を描いています。
内容自体は、星新一のショートショートにありそうです。
文章にすれば決して長い作品ではないでしょう。
それを、非常に丁寧に100分の映像作品にしたため、展開に無理がなく、キャラクターへ感情移入がしやすい作品に仕上がっています。
映像は、幾分チープな印象を受けました。
でも、最近のSFは、VFXが凄すぎて、逆にそれっぽさが失われている気がします。
そういう点では、内容にあった絵作りだったと思います。
キャラでは、サムはヒーローではなく等身大の人間なので、個性があると言うわけではありませんが、宇宙飛行士らしく、頑強で賢い人間です。ただ、短気が玉に瑕です。
しかし、この作品で最もイケてるキャラは、基地にてサムのサポートをするAIガーティです。
こいつが非常に人間的で友情に厚い。
機械的な音声の裏に、暖かい心を持った格好いい奴です。
おそらく原案が非常に短いと思われるため、SFとヒューマンドラマをどちらも省くことなくやりきった佳作です。
ただ、エンターテイメント的なものは、ほとんどありません。
じっくり世界観を味わう作品でしょう。
面白いです。
観てみてください。
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